D2C事業の立ち上げ方①プロダクト〜プライシング(価格設定)編

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taro@フリーランスマーケター
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こんにちは!フリーランスマーケターのtaro(@taro_freelancer)です。本記事では、数多くのD2C事業のリサーチをし、現役でD2Cマーケにも従事している私が思う、D2C事業の立ち上げ方について書いています。価格設定から広告運用、オーガニックチャネル、アドアフィなどのマーケティング戦略をシリーズで書いていきますので、ぜひ役立ててみてください。

D2C立ち上げの前提とビジネスモデル

D2Cの立ち上げの前提として、プロダクトアウトではなく、マーケットインの観点での参入戦略を考える。ビジネスモデルは、サブスクリプションモデルの単品EC型と仮定します。

2つのECモデル

後述しますが、ECにおいては、大きく以下の2つのジャンルしかありません。

  • 総合型EC
  • 単品EC

総合型ECサイトについては、代表的なところでは、Amazonや楽天、ZoZoなどが代表例となります。自社で複数の商材を扱いDBに貯めていくモデルのECサイトで、アパレルなどのD2Cはここに当てはまります。

サイト設計の構造としては、
トップページ > カテゴリページ > 商品詳細ページというような形が一般的で、顧客をカテゴリページなどに呼び込んだ後で、お目当ての商品にいかに早くたどり着けるようにするかがポイントになってきます。

一方で、単品ECに関しては、DBという概念よりも、LPによる広告での訴求が一般的で、ブランドサイトからの購入可能なD2Cも多いですが、基本的には、フォーム一体型LPでの直接購買がほとんどとなります。

なぜ単品ECなのか

単品ECのサブスクリプションモデルにすることのメリットは、そのビジネスモデルにあります。各種広告媒体(Google/Yahoo/FaceBook/Twitter/TikTok/Gunosy/スマニューなど)での広告出稿での顧客獲得を主軸とするD2Cの場合、配信面に対するオークションに勝てるかが大きな差別化要因となります。

運用型広告の基本公式としては、最低限以下のことは抑えておきましょう。

  • CPM(1000回表示あたりにかかるコスト)
  • CPC(1クリックあたりにかかるコスト)
  • CPA(1CVあたりにかかるコスト)
  • CTR(クリエイティブがクリックされる割合)
  • CPM = CPC * CTR * 1000
  • Cost = CPC * Click
  • CPA = Cost / CV

特にCPM = CPC * CTR * 1000の部分においての変数は、CPC(入札の強さ) * CTR(クリエイティブ)となるため、CPCを高く張れるほど有利になります。

上述するように、運用型広告の場合、配信面に対する入札価格が大きな指標になります。
もちろん、運用のうまさの良し悪しなどで、CPAを抑えての運用も可能ですが、1人の顧客獲得に、1000円しか出せない会社と5000円まで出せる会社が、出稿したら明らかに後者が勝ちます。

つまり、運用型広告においては、1人の顧客獲得にかけられる広告費(限界CPA)がいくらかというのが非常に重要になります。ここが高ければ高いほど、配信面に対するオークションを勝ち抜ける確率が上がります。

なので、同じ美容液を作っている会社Aと会社Bがあったとして、

(例)
会社A:美容液 8000円の買い切りモデル
会社B:美容液 5000円のサブスクリプションモデル(平均LTV3ヶ月)

会社Bは、平均LTVが3ヶ月なので、4ヶ月後には、15000円になることが確定しています。
仮に原価率が30%だった場合、Aは5600円以内で顧客を獲得しなければならない一方で、Bは10500円まで許容できるというビジネスモデル上の競合優位性が生まれます。

D2Cの商品企画・ジャンルに関して

上記で、サブスクリプションモデルで展開していくメリットを理解されていることでしょう。
では、次にD2Cの立ち上げの商材は何を選べばいいのかという点に関して、お話していきたいと思います。

サブスクリプションという性質上、

  • 商品が毎月届く = 消費財・日用品
  • 限界CPAを高くとれるように、商品単価もある程度高くないといけない

この2つを抑えていなければなりません。
日用品だけど、商品単価が低いとどうなるかというと、例えば、洗剤のサブスクを2000円で展開する場合、平均LTVが3ヶ月でも、3ヶ月LTV(売上)が6000円にしかならず、広告への配信で戦っていくには厳しくなります。

また、消費財や日用品というジャンルは、ほとんどの消費者がスーパーやAmazonなどで安く買うことが当たり前と思っているジャンルでもあるので、仮に10000円でも売ることが可能なジャンルである必要があります。

そう考えると、結局、化粧品・健康食品にほぼほぼ集約されていきます。
化粧品だと、1000円 ~ 20000円の美容液が存在しピンキリな市場であるため、成分や効能に顧客が期待できると感じれば買われやすい市場です。

逆に、冷凍食品の宅配D2Cを行うとして、価格はせいぜい3000円程度が限界ではないでしょうか。冷凍食品に10000円を出すという感覚がないという市場だからです。

限界CPAから逆算するプライシング(価格設定)

D2Cの立ち上げにおいて、最も重要なプライシングについてですが、もちろん競合との比較という面もありますが、これによって、限界CPAが大きく変わるので慎重に設定する必要があります。

特に、アドアフィをマーケティングの戦略に組み込む場合は、アドアフィが最も、CPAが高くなるケースが多いので、ここを起点に限界CPA考えます。私の場合は、IT業界・ASP界隈・D2C界隈・アド界隈への繋がりがありますので、現状市場に出ている、商材がどの媒体でどの程度のCPAで獲得しているのかというのを把握しています。

後発で市場で参入する場合、先行者がどのチャネルのどの媒体で、どういうクリアイティブで、どの程度のCPAで顧客獲得をしているのかということをリサーチしておきましょう。

ここでは、仮置きでシャンプーを作るとして、定価6000円で販売すると置きます。平均のLTVを3ヶ月とすると、諸々以下のようにまとまります。

  • 単価 6000円
  • 平均LTV 3ヶ月
  • 3ヶ月LTV 18000円
  • 原価 + 配送など(30%) 5400円
  • 限界CPA 12600円

上記概算ですが、D2Cの重要指標である、LTV – CPAに当てはめると、限界のCPAが12600円程度とわかります。もちろん、最終的には人件費や固定費かかりますので、12600円でとっていれば赤字です。

市況感的には、CPA10000円程度を見ていれば基本的には安全かなという印象があるので、目標のCPAは7500円程度に設定し、1本売れれば1本あたり5000円程度の粗利が得られるといいなといった温度感で事業計画を作ることが多いです。

実際には、アドを主軸に展開するものの、SEOアフィやオーガニックチャネルの方にも注力するので、全体のCPAはもっと下げられると踏んでいます。

また、広告を主軸にするのか、オーガニックを主軸にするのかでは、戦い方やPRの面でも大きく変わります。この辺りのお話しは以下の記事も参考にしてみてください。

D2C vs 単品通販 アイキャッチ 【D2C vs 単品通販】D2Cと単品通販のマーケティング戦略・考え方の違いとEC市場の未来予測

D2Cは立ち上げが7割

アド主導のD2Cの場合は、限界CPAによる競合優位性が新規顧客獲得に与えるインパクトが非常に大きいので、0から立ち上げる際は、競合の獲得CPAのリサーチ、LTV見込みから逆算して設計することをおすすめします。

今回の記事では、プライシングに伴う大まかな全体戦略についてお話しました。次回の記事では、D2Cが取れるマーケティング戦略(インハウス広告運用・アフィ・オーガニック・モール)などのメリデメを紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。