こんにちは、フリーランスマーケターのtaroです。今回の記事では、D2Cと単品通販のどちらにも関わっている私が感じる、D2Cと単品通販の違いと今後の未来予測に関して取り上げています。
この記事の目次
D2Cも単品通販もビジネスモデルは同じ
基本的にD2Cも単品通販も、ビジネスモデルは、サブスクリプションモデルのEC通販だと思います。(ECモールや総合通販のお話は今回でてきません。)
いわゆる、化粧品とか健康食品とかをネットで購入して、解約しない限り翌月も翌々月も自宅に送られてくるやつです。
実際、D2Cも単品通販も事業上、大切な指標は
LTV(顧客生涯価値) ー CPA(顧客獲得単価)
の公式であり、このユニットエコノミクスが成り立ってるかが事業の肝と言えます。
しかし、D2Cと単品通販では、ブランディングというものに対する考え方がまるで違うと私は思っています。
この記事では、具体的にどのような点が異なるのか詳しく書いていきたいと思います。
D2Cが大切にする世界観とストーリー
「私らしい“美”を解放する」をコンセプトに、web上での診断によって、パーソナライズされた、フェイスマスク・サプリメントを販売しているD2Cブランド。
お菓子という単なる「モノ」ではなく、おやつ時間、そしてワクワクしたり楽しんだりする体験を提供するおやつの定期便Snaq.me。
最高の品質を、最適な価格で届ける。それまで、敷き居の高かったオーダーメイドススーツの民主化を主導しているFabric Tokyo。
他にもまだまだ、たくさんのD2Cブランドがありますが、ここ最近は特に、「パーソナライズ〇〇」という文脈のD2Cブランドが増えてきているように思います。
D2Cブランドでは、特に世界観におけるストーリーテリングという側面が色濃く反映されており、広告も含めたコミュニケーション設計に非常に気を遣っているという印象があります。
そうした、コミュニケーションは特にインスタグラムなどのメディアが活用されていることが多く、例えば、グリーンスムージーのD2C「Green Spoon」のインスタグラムを覗くと世界観が伝わる優美なクリエイティブで構成されています。
また、広告のクリエイティブに関しても世界観を守ったクリエイティブが出てくる印象が多いです。
余談ですが、食のD2Cは原価率が高くなりがちで、配送も冷凍だったりと配送費用も高くなり、ポスト投函もできないケースが多いです。また、複数のSKUを揃える必要もある場合は、最小ロット数 * SKUの在庫を抱えるため、初期のコストが重くなりがちです。
単品通販はCPA主義になりがち
一方で、単品通販の場合は、どちらかと言えば、CPAを下げることに特化しているなという印象が非常に強いです。
ここでは、敢えて事例等は出しませんが、GoogleやYahoo、FBやGunosyなどあらゆる媒体で出てくる、不快な広告で安く刈り取っているケースが非常に多いです。
- 鼻の角栓を以上に目立たせた写真
- 黄ばんだ歯が白くなるBefore/After
- シワやたるみを以上なほど強調させた写真
- 飲むだけで痩せると誤認させるようなクリエイティブ
- 薬事法を違反した表現での言い回し
など、ネット記事やSNSを見ている時に、不快な広告に出会った経験が誰しもあるのではないでしょうか。
なぜこのような広告が配信されているのかと言えば、端的に儲かるからです。
やはり、多少ネガティブな表現をした方がお客さんの食いつきがよく、結果、劇的に低いCPAで獲得できるということは普通に起こります。
いわゆる、アドアフィリエイターによる第三者配信などのパターンがこれに当たることが多く、顧客目線というよりも、CPAをいかに低く抑えられるかというところが重視されている業界構造になってしまっています。
なので、単品通販の広告は、ほとんど薬事法のチキンレースになっています。
単品通販の商材は基本的には、年齢層が高めのターゲットが多く、悩みへの訴求が中心に構成されます。なので、プロダクトの作成段階において、化粧品で行くのか、医薬部外品で行くのかを決めておかないと訴求力がさがる可能性があります。
LTVを重視するD2CとCPAを重視する単品通販
D2Cと単品通販で、どちらが儲かるかと言えば、今の市場だと、単品通販だと思います。
D2Cの場合、顧客とのコミュニケーションを非常に重視する傾向にあるため、マーケティングの手法としては、インスタオーガニックのみや、FB/IG広告、インフルエンサーマーケティングといった、ブランド毀損が起きないことを前提にした、コミュニケーション戦略が多いです。
基本的に激しめのクリエイティブなどは不向きであり、CPAは高くなってしまいがちという欠点を抱えます。広告配信で最大限リーチを取るという戦略がそもそも向いていないので、熱狂的なファン・エヴァンジェリストとの向き合いの中で徐々のコミュニティが大きくなっていくとうケースが多いです。
成長したコミュニティや熱狂的なファンはブランドを支える上で非常に重要で、LTVも長くなるものの、その状態にたどり着くまでに非常に時間がかかる上に、ブランド毀損を気にする特性上、安く刈り取りができるはずなのに、踏み込んだ広告配信をしづらいというデメリットも存在します。
一方で単品通販の場合は、オーガニックメディアでの刈り取りを重視しない傾向が強いです。ブランディングというものに対する意識が薄く、CPAを下げることに特化しているので、薬事法に違反しない形でのインパクトの高い訴求で、リーチを最大限広げることがもっとも効率がいいからです。
例えば、化粧品の原価が20%と仮定し、LTVが3ヶ月とします。
定価が8000円とし、初回で50%OFF、2回目以降で10%OFFでの購入とします。
すると、LTVは
初回 4000+ 2回目 7200円 + 3回目 7200円 = 18400円
となります。
原価率が20%だとすると、3680円なので、粗利としては、14720円が残ります。
あとは、1件の顧客獲得あたりの広告費がいくらなのかという部分で、商材の特性やターゲット層、媒体の選定などによっても変動しますが、ざっくりCPA10000円で取れるとすると、
「1件商品が売れると、4ヶ月後には4720円の黒字になる」と計算できます。(もちろん配送や同梱物、人件費など諸々他にも経費は存在しますが、一旦無視します。)
なので、基本的なマーケティングのスタンスとしては、CPAをどれだけ押さえ込めて、CV数をどれだけ稼げるかという部分に帰着してきます。
D2C vs 単品通販の今後の未来予測
こう見ると一見、単品通販の方が優れているのではないかと思われそうですが、私個人としては、単品通販の市場はレッドオーシャン化に向かうと考えています。そこには、ネット広告に対する国や消費者庁、広告媒体側の姿勢の変化が大きく関わってきます。
これまではネット広告のルールが追いついていなかったというのが大きなポイントだったと思います。
もちろん薬事法をしっかり守り、法律の範囲内で戦ってきた多くの会社さんもある一方で、薬事ギリギリのグレーな広告や違反した広告で劇的に低いCPAで刈り取ってきた業者もたくさんいます。そういう状態だと、市場のバランスが崩れますので、ズルした方が勝てるという不健全な環境となってしまっていました。
しかし、特にここ最近は、消費者庁の取り締まりや、特にLINEやYahooの媒体審査が厳しくなってきており、以前に比べると、とてつもなく薬事法も無視した広告の量は減ってきているのかなと思います。
ネット広告環境に対する浄化・クリーン化に対する動きは、確実に止められない流れだと思います。そうした際に、プロダクトアウト的な思考性とCPA至上主義で戦ってきた単品通販は、
- 薬事法のルール内/厳しい媒体審査で戦うのでCPAが上がる
- 機能的便益に頼り切ってきているので、他者との差別化ができない
- ブランドをロイヤリティを軽視してきたため、ストック性が低い
という三重苦に直面すると考えています。
なので、マーケットインの思考性で、WHO・WHAT・HOWが明確であり、情緒的な価値も兼ね備えたD2Cプロダクトの方に軍配が上がってくるのではないかなと考えています。
D2C | 単品通販 | |
思考性 | マーケットイン | プロダクトアウト |
重視する価値 | 情緒的価値 | 機能的価値 |
重視する指標 | LTV | CPA |
資産性 | 高い | 低い |
直近数年の利益率 | 低い | 高い |
この記事のまとめ
D2Cと単品通販のどちらも一長一短であり、良い悪いではないと思います。また、この記事では、D2Cと単品通販と2カテゴリーを極端に切り分けていますが、ここのグラデーションは様々であり、会社のBSや目指すべき打点、世界など経営層の思考性も大きく関わる部分だと思います。
しかし、どちらにせよ、やってくる未来に代わりはないので、市場の変化に敏感に判断し続けることがマーケターとして非常に大切なことなのではないでしょうか。